生命科学・化学系では,遺伝子とタンパク質を中心としたバイオサイエンスや,化学の基本原理とその応用を学びます。4年間の学修で身につけた科学的思考力は,理系分野だけでなく,さまざまな分野で活かすことができます。

 

受験生の方へ

2023年度より,生命科学・化学系はカリキュラムをリニューアルして「化学・生命科学コース」に生まれ変わります。詳しくは,以下のリンク先で「化学・生命科学コース」のWEB OPEN CAMPUS ページをご覧ください。

化学・生命科学コースの詳細

 

生命科学・化学系の特色

フェイス to フェイス

学生と教員の距離が近く,少人数制での手厚い指導を受けることができます。学部4年間の学びの集大成である卒業研究では,教授陣から直接指導を受けることによって,研究能力だけでなく,計画性・思考力・プレゼンテーション能力を身につけられます。

好きな研究分野を深く学ぶことができる

教授陣の専門分野は,化学からバイオサイエンスまで多岐にわたり,多彩な講義科目から自分の興味や進路に合わせ選択して履修できます。3年次からは関心のある分野をより深く学ぶために,希望の研究室で先端的な研究に取り組みます。

広く、新しい学習環境

学生一人ひとりに広い学習・研究スペースが確保されています。本学系の専用フロアは,学生の自習スペースと教授室が隣接しており,日常的にコミュニケーションをとることができます。

教員免許状の取得

本学の教育学部と連携し,中学校・高等学校教諭一種免許状(理科)を取得できる履修プログラムを設置しています。専門知識をもった教員を目指せます。さらに,併修制度を利用すると小学校教諭一種・二種免許状も同時に取得できます。

 

授業紹介

化学・生命科学実験1〜4

どんな内容の講義?

無機化学分野,分析化学分野,物理化学分野,有機化学分野,生命科学分野の基本的な考え方を学び,それらの分野で用いられる基本的な実験技術を習得することができる実験科目です。

例えば無機化学分野では,さまざまな遷移金属錯体の合成や精製を通して「錯体」とはどのようなもので,どのように合成・精製するのか,どんな測定を用いると何を知ることができるのか,といったことが理解できます。

生命科学分野では,微生物を扱う際に基本となる顕微鏡の使い方や滅菌法,培養などを学ぶとともに,ベクターを用いてオワンクラゲの緑色蛍光タンパク質の遺伝子を酵母に導入し異種発現させる(図1),つまり酵母に別の生物のタンパク質を作らせる,といったバイオテクノロジーの基礎技術を学びます。

 

図1.通常の酵母(左)と緑色蛍光タンパク質の遺伝子を導入した酵母(右)を培養し,青色光を照射したもの.右の酵母の細胞内では導入した遺伝子から緑色蛍光タンパク質が作られるため,緑色の蛍光を発する.

 

特徴は?

薬品や微生物を扱う際に必要となる実験技術が身につくだけでなく,実際に自分たちの手を動かして実験を行うことで,化学や生命科学分野の知識をより深く理解することができます。

どんな進路につながる?

生命科学分野の知識・実験技術は,例えば食品系の企業において品質管理や分析部門で必要とされますし,将来バイオテクノロジーが関係する企業を目指すなら必須となります。化学分野の知識・技術は,素材メーカーなどでの品質管理(分析技術が必要)や原料・製品の精製に役立ちます。またレポートの作成は,将来ほとんどの進路で必要となる報告書を書くための訓練にもなります。

有機物性化学

どんな内容の講義?

ポリ袋や衣類の繊維といった構造材,色とりどりの塗料や液晶ディスプレイ,洗剤から爆薬まで,炭素を含む有機化合物は,現代社会のありとあらゆるところで利用されています。この講義では,有機化合物がどんな用途に使用されているのか,その目的にはどんな特性が重要となってくるのかを,幅広く学びます。

特徴は?

ある目的に必要となる性質と,分子の構造とを関連付けて学ぶことができます。例えば,有機化合物の多くは波長の短い紫外線しか吸収できず無色ですが,広いπ電子系を持つとより長い波長の可視光を吸収できるようになり,色が付きます(図1)。

 

図1.藍染やデニム生地の染色に使われるインジゴの分子構造。広いπ系が発色に重要な役割を果たす。さらに,窒素原子の持つ非共有電子対がπ電子系に押し込まれる効果や,カルボニル基(C=O)が電子を引っ張る効果も発色に影響を与えている。

π電子系は色以外にもさまざまな特性に関係していて,有機物の物性を考えるときにはとても重要な要素です。例えば,鋼鉄を大きく上回る引張強さを示し『最強の有機繊維』といわれるPBO繊維(図2)は,π電子系が広がることで剛直な(=まっすぐで変形しにくい)分子となり,しかも隣の分子との間に引力が働きます。PBO繊維のけた外れの強度には,これらの特徴が大きな影響を与えています。

『ある目的にはどんな特性が必要なのか』に加えて『それを実現するためには,どんな分子構造が必要になる(影響を与える)のか』を学ぶことができるのがこの講義の特徴です。

 

図2.PBO繊維の分子構造。この分子構造には,結合を強くする工夫や,分子鎖同士が積み重なりやすくなるような工夫がいくつも組み込まれており,強度を向上させている。

 

どんな進路につながる?

新しい機能性材料を開発するような場合に,この講義で学んだ知識が役立ちます。例えば塗料,有機半導体,電池などの材料を開発する化学系のメーカーやそれらを取り扱う商社などの仕事では,この講義で学ぶ知識が必要になってきます。この講義では有機物が関係するさまざまな領域をカバーしており,幅広い進路の「入口」となるよう,各分野で重要となる考え方,用語,原理をわかりやすく紹介しています。

無機化学2

どんな内容の講義?

周期表のうち典型元素と呼ばれる元素とその化合物が,どんな性質を持ち,どのような役割を果たしているのかを学びます。例えばアルカリ金属(Li,Na,K,Rb,Cs)を例にとると,これらの単体はすべて柔らかい金属で,非常に酸化されやすく水とは激しく反応します。無機化学2では,なぜこのような性質を持つのかを原子の電子構造から理解することを目指します。また,アルカリ金属やそのイオンは電池でも使われますし,有機化学合成でも重要な役割を果たす元素です。この講義では無機化学の枠にとらわれず,元素や化合物の工業的な重要性や用途,社会とのかかわりなども取り上げます。

特徴は?

元素は一つ一つが異なる個性を持っていますが,その性質には傾向があります。例えば周期表の横方向で比べると,右の元素ほど原子の大きさは小さく,正イオンにはなりにくい。縦方向で比べると,下の元素ほど半径は大きくなり,正イオンになりやすく金属性が増します。このような傾向は「原子軌道」(※電子の入れる空席のようなもので,さまざまな形や大きさがある)への電子の入り方(=電子配置)と,原子核の電荷によって説明することができます。この講義では,個々の元素や化合物の性質を学ぶだけではなく,性質の差を生む「根本的な原因」に目を向け,統一的に理解することを重視しています。

統一的な原理・原則(総論)を学ぶ一方で,無機化学では個々の物質の性質(各論)も避けては通れません。この講義では,さまざまな化合物に少しでも親しみが持てるよう,鉱物標本やさまざまな化合物の実物,反応の様子を記録した動画を数多く講義に取り入れ,五感とともに知識を学べるよう心がけるとともに,社会でどう利用されているのか,などがわかるようにしています。

例えば図1は「蛍石」(fluorite)として知られる鉱物です。主成分はCaF2ですが,イギリス産の蛍石は希土類元素を不純物として含み,紫外線が当たると青白く発光します(講義中に実物を見てもらっています)。

照射した光と異なる色の光を出す現象は蛍光(fluorescence)と呼ばれ,現代社会のあちこちで利用されていますが,その語源となっているのが蛍石です。また蛍石は,製鉄においても不純物を溶かしだす,という重要な役割を果たしています。実はfluoriteという名前は,鉄鉱石を溶かして「流れる」(flow) ようにする,というのが由来です。単純ながら,重要な化合物です。

図1.イギリス・ロジャーリー鉱山産の蛍石。可視光下では不純物により緑色だが(左),紫外線が当たると青白く発光する(右)。

 

どんな進路につながる?

元素の性質は新しい物質,特にガラスやセラミック,難燃性素材などの無機材料を開発するのに必要不可欠です。無機材料系のメーカーでは,この講義の知識が大きく役に立ちます。化学薬品を取り扱う技術職を目指す人にはぜひ受講してほしい科目の一つです。

 

研究紹介

ゲノムDNAの傷が修復されるしくみに関する研究(構造生命科学研究室

研究の概要

ヒトの「設計図」であるゲノムDNAは,活性酸素・紫外線・放射線などにより,日常的に傷つけられています。細胞にはゲノムDNAの傷を修復する機能が備わっており,細胞が正常に生命活動を行うために重要です。しかし,DNA修復が正常に行われないことがあり,それが発がんや遺伝病の原因となることが近年わかってきました。構造生命科学研究室では,傷ついたゲノムDNAが修復されるしくみを分子や原子のレベルで解明し,発がんや遺伝病の予防や治療に役立つ研究成果を生み出すことを目指しています。

ゲノムの基盤構造体ヌクレオソームの構造と機能(分子生物化学研究室

研究の概要

細胞の中で遺伝情報を担うゲノムDNAは,ヒストンと結合してヌクレオソームと呼ばれる構造を形成しています。分子生物化学研究室は,細胞特異的遺伝子の発現や疾患の分子機構の解明をめざし,ヒトと同じ細胞構造をもつ出芽酵母をモデル生物として,遺伝子発現制御におけるヌクレオソーム構造と機能を研究しています。

生命を司る遺伝子の細胞核への収納機構(分子細胞生物学研究室

研究の概要

生物の細胞の核には,生命を司る遺伝子がヌクレオソームとして収納されています。この遺伝子を日々使いながら,生物は生きています。何事にも整理整頓は大事で,この遺伝子の収納がきちんとされないとうまく遺伝子を使えず,病気などになってしまいます。分子細胞生物学研究室では,この遺伝子の細胞核への収納機構について研究を進めています。

原子レベルでのタンパク質と薬剤の相互作用解析(生物分析化学研究室

研究の概要

多くの生体反応に関与している酵素は,タンパク質です。生物分析化学研究室では,種々のタンパク質と薬剤などの低分子化合物との分子間の相互作用について,原子レベルで解析しています。試料を磁場の中に入れて,水素や炭素などの原子核の動きを観測し,結合の詳細を解析します。

分子を使った磁性体やナノ物質の開発(物性化学研究室

研究の概要

身の回りの磁石は金属やその酸化物でできている無機磁性体と呼ばれる物質ですが,それらとは異なり磁性をもつ有機分子や錯体からできている『分子性磁性体』と呼ばれる物質が存在します。分子性磁性体は様々な置換基を組み込むことで,磁場で伝導性が変わる物質やガス吸着で磁性が変わる物質など,無機磁性体では実現しにくい面白い磁性体をつくることができます。しかしその一方で,相互作用が弱く低温でしか機能を発揮できないという大きな弱点も。物性化学研究室ではさまざまな新分子を合成し,分子性磁性体でありながらも相互作用が強い新物質の開発を行っています。

有用物質合成のための新規酵素の探索と利用(生物機能有機化学研究室

研究の概要

酵素は,生体内の代謝反応において触媒として働くタンパク質です。30℃くらいの温度や水中など穏やかな条件で機能するため,環境にやさしく省エネルギーな物質変換法として期待できます 。生物機能有機化学研究室では,新しい酵素の触媒能力を自然界から見つけ出し,酵素の性質や機能,構造を明らかにするとともに,有用物質の斬新な物質合成プロセスへと展開する研究に取り組んでいます。

環境にやさしい有機合成反応の開発研究(生体触媒化学研究室

研究の概要

右手と左手のように,重ね合わせることのできない鏡像関係にある異性体を「鏡像異性体」と言います。こうした化合物には医薬品など社会に役立つものが多くあります。生体触媒化学研究室では,環境にやさしい,生体触媒や有機分子触媒を応用して鏡像異性体の効率的な合成法の開発を行っています。

 

卒業後の進路

進路指導

生命科学・化学系では,卒業後の進路について学生に早期から意識してもらうことを重要視しています。本学系では2年次より必修科目である「理工キャリア開発」においてキャリア教育を行なっています。3年次では,必修科目である「プロジェクト5」において,自己分析や自己PRなど就職活動の基盤となる能力を丁寧に指導しています。また,これらの授業において外部講師を招き,就職活動に関する近年の動向や,インターンシップの重要性について解説してもらい,学生が希望の職に就けるようにサポートしています。

 上記とは別に,本学のキャリアセンターでは,年間を通じて多種多様な就活支援プログラムを実施しています。その中に,インターンシップ対策講座,業界研究講座,筆記試験対策講座(SPIなど)が含まれています。また一般企業に就職希望の学生だけでなく,公務員や資格取得のサポートも行っています。なお,教員希望の学生のサポートは,教職センターが担っています。

就職分野

生命科学・化学系の卒業生は,多岐にわたる分野で活躍しています。生命科学・化学系を卒業すると,(1)学部を問わない一般職,(2)理系限定の技術職,(3)バイオや化学,環境の知識や技術を活かした専門職に就くことが可能です。近年は専門・技術サービスを含むサービス業,卸売・小売業,情報通信業に就職する学生が多く見受けられます。

 就職の他に,生命科学・化学系からは毎年1割程度の卒業生が大学院に進学しています。また毎年数名程度,教員採用試験に合格し,中学校・高等学校の教員になっています。

 

主な就職先

株式会社富士薬品,アインファーマシーズ,株式会社スリーボンド,イケダガラス株式会社,エムケーチーズ株式会社,巴商会,三星化学工業株式会社,株式会社ハチオウ,相田化学工業株式会社,島津メディカルシステムズ株式会社,H.U.グループ(旧 みらかグループ),多摩化学工業,白辰化学研究所,株式会社セントラルフーズ,WDB株式会社 エウレカ社,セントラルエンジニアリング株式会社,エンテックス,株式会社テクノプロ テクノプロ・R&D社,株式会社コスモ計器,高砂熱学工業株式会社,菊川シール工業株式会社,株式会社トリケミカル研究所,癸巳化成株式会社,メイテックフィルダーズ,資生堂ジャパン,東京ガス株式会社,株式会社日立ハイシステム21,日本SE株式会社,NTTデータMSE,日本電子,アドバンテック株式会社